
第1週
「片口鰯の梅干し煮」

房州に疎開していた幼い頃、釣り好きだった父がどさっと釣果を抱えて帰ると、母はそれっとばかり夜なべして料理したそうです。いわしが大漁だったときは、たたいて、煮て、干してと大忙し、「鍋では間に合わず釜で佃煮を炊いたりしたものよ」と聞きました。いまも6月にはいるとわが家には夏の訪れを告げる旬の新鮮な片口いわしが地元の漁師さんのところから届きます。とれたての片口いわしは、背に鮮烈な藍色が走り、その気品ある美しさに目を奪われます。鮮度が命の魚ですから、さっそくたて塩をし、手開きにして、たたいて、煮て、干して……と母と同じようにさまざまに調理するのが楽しみです。塩水でゆでて、天日干しにすれば煮干しにもなります。またアンチョビーも手作り。手開きにして骨をよく取ってから、たっぷりの塩をして密閉容器に1か月。水で洗って水気と小骨、尾を取り、ベイリーフやエストラゴンなどを加えたオリーブオイルに漬けて3日でいただけます。常備菜としてこれほど安価で美味で身体によい魚はほかにないと思いますよ。
|
 |
 |